「ふくろく」って、どういう意味ですか?
──そう尋ねられること、私たちにはよくあります。
この名前、実は適当に名付けたわけではなく、ある神様の名前をお借りしているのです。
この記事では、ふくろく訪問看護ステーションの名前の由来について、ゆっくりとお話しさせてください。
七福神「福禄寿」とのつながり。三つの徳に込めた意味。そして、訪問看護の理念との重なり。
さらに、大東市の在宅ケアを取り巻く現状と、私たちが地域でどんな役割を担っていきたいかについても、お伝えします。
「ふくろう(梟)」と混同されがちですが、「ふくろく」はまったく異なる意味の言葉です。
はじめにお伝えしたい結論を、ひとつ。
「ふくろく」は、七福神の一柱・福禄寿(ふくろくじゅ)に由来する名前です。
訪問看護の世界では、「ふくろう」を冠したステーションが全国に数多くあります。
「不苦労(苦労知らず)」の語呂合わせから、温かみのある名前として広く親しまれてきました。
一方、「ふくろく」という表記は珍しく、訪問看護業界ではほとんど見かけません。
少しだけ立ち止まって「あれ?ふくろう、じゃないの?」と気づいていただける──それも、ご縁の入り口になればと願っています。
ひらがな表記の「ふくろく」には、二つの想いを込めています。
福禄寿は、次の三徳をもたらすとされる神様です。
訪問看護というお仕事の本質と、不思議なくらい響き合う三つの言葉です。
次の章では、その福禄寿という神様について、もう少し詳しくお話しします。
福禄寿は、日本で古くから親しまれてきた七福神の一柱です。
その源流は、中国の道教における星辰崇拝にあるとされています。
南の空に輝く南極老人星(カノープス)の化身として信仰されてきました。
日本に伝わったのは古い時代のことですが、七福神信仰として広まったのは、室町時代末期、京都を中心としてだといわれています(諸説あり)。
お正月の七福神めぐりや、宝船の絵に登場する、あの背の低い長頭の神様──。
それが、福禄寿です。
福禄寿の像には、いくつかの印象的な特徴があります。
特に印象的なのが「長頭」です。
これは奇妙な造形ではなく、知恵の象徴とされています。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」のことわざにも通じる、深い意味が込められているのです。
賢者ほど重みを増した頭を、ゆっくりと垂れていく──そんな佇まいが、福禄寿の像には宿っています。
鶴は、ご存じの通り長寿のシンボル。
福禄寿が「健康に、長く生きられますように」という願いを宿した神様であることを、その姿全体が静かに語ってくれています。
福(幸福)・禄(暮らしの糧)・寿(長寿)。
名前に込められた三徳は、よく知られています。
けれども実はもうひとつ、名前には現れない4つ目のご利益があるとされています。
招徳人望(しょうとくじんぼう)──人徳によって、自然と人が慕い集まってくる徳。
看護師という職業にとって、これほどありがたい徳目はありません。
利用者様にもご家族にも、そっと信頼していただける存在でありたい。
「招徳人望」は、私たちが日々忘れずに胸に置いておきたい、四つ目の徳でもあります。
ここからは、福禄寿という名前を構成する三つの漢字を、少しだけ深く覗いてみたいと思います。
漢字の成り立ちを辿ると、訪問看護の仕事に通じるものが、思いがけず立ち上がってきます。
「福」は、示偏と旁の「畐(フク)」を組み合わせた形声文字です。
「示」は祭壇や神を表し、「畐」はお酒や穀物が満ち溢れる器(壺)の象形だと伝えられています。
神前に供物を満たして、その恵みを祈る情景──。
それがそのまま字源になっている、というのです。
古典『書経』洪範篇には、人が天から与えられる幸せとして「五福」が挙げられています。
「福」とは、人が天から与えられる幸せの総体──奥深い言葉なのです。
現代でも「幸福」「祝福」「福祉(well-being)」という言葉のなかに、その面影は生き続けています。
「禄」もまた、示偏を含む文字です。
漢和辞典によれば、その第一義は「天から与えられる福善・さいわい」とされています。
そこから派生して、官に仕える者に与えられる給与「俸禄(ほうろく)」を指すようになりました。
江戸時代の武士の「禄高(ろくだか)」や、現代でも残る「禄を食む」という言い回しは、ここから来ています。
大切なのは、「禄」が単なるお金の話ではないということです。
「禄」とは、職務に対して支えられる、生活の糧そのもの──つまり、暮らしを成り立たせてくれる、日々の安心のこと。
訪問看護の文脈に重ねるなら、「禄」は住み慣れた場所で過ごし続けるための、暮らしの安心と読み替えることができます。
これは「俸禄」という具体的な意味からはやや離れますが、字源の本義「天から与えられる福善」に立ち返れば、伝統的な意味の範囲内に収まる解釈です。
「寿」は旧字「壽」として書かれていた文字です。
字源には「老」の変形と、「細長く延びる」という意味を持つ音符が含まれています。
細く長く延びていくイメージが、時間の流れに重なり、「命が長く延びる」という意味へと結ばれていったのです。
意味は大きく三つに広がります。
書道の色紙にも、結婚式の祝詞にも、お正月の床の間にも、「寿」は静かに存在し続けてきました。
「福禄寿」という三字には、こうして──。
「神からの恵み」「暮らしの糧」「長く健やかな命」。
人の暮らしの根本にあるものが、ぎゅっと凝縮されているのです。
三つの徳を順番に見ていくと、不思議なほど、訪問看護というお仕事の輪郭が浮かび上がってきます。
厚生労働省が掲げる「地域包括ケアシステム」の説明には、こんな一節があります。
「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう」
これは、訪問看護や在宅医療のあらゆる場面で繰り返し用いられる、いわば国の公式な理念です。
(出典: 厚生労働省「地域包括ケアシステム」公式ページ)
ふくろくのステーション理念「その人らしい暮らしを、住み慣れた場所で支える」。
これは、この公式表現と、ほとんど同じ景色を見ています。
福禄寿の三徳と、ふくろくの理念の対応関係を、ひとつにまとめます。
注目していただきたいのは、ある一点です。
「寿」を歩まれるのは、ご利用者様ご自身である、という点です。
長く健やかな人生という、もっとも大切な徳。
それは、私たち訪問看護師が「与える」ものではありません。
それは、ご本人の人生そのものなのです。
では、私たちにできることは、何か。
その「寿」を歩むご利用者様の傍らで、「福」と「禄」をそっとお届けする伴走者でいること。
──それが、私たちの考える役割です。
公益財団法人日本訪問看護財団が掲げる理念は、こんな言葉です。
「豊かな人生と安心して暮らせる地域の実現を目指して、人に寄り添い、支える訪問看護・在宅ケア」
並べて読み直してみると、自然に重なります。
業界の公式な理念と、私たちの店名は、自然に同じ方角を向いていることが見えてきます。
名前の由来をお話ししたあとに、少しだけ現実のデータにも目を向けさせてください。
「ふくろく」が大東市というこの場所で訪問看護に取り組む意味を、数字が語ってくれます。
大東市の高齢化率は、27.4%。
(2023年、住民基本台帳ベース/大東市公式)
すでに4人に1人以上が高齢者という、超高齢社会の真っ只中にあります。
大東市の推計では、2050年にはこの比率が38.9%にまで上昇すると見込まれています。
25年後には、3人に1人を超える時代が、すぐそこに見えているのです。
東大阪市、大阪市、八尾市といった周辺地域も、同じく高齢化の波の中にあります。
在宅でのケアを必要とする方は、確実に増えていきます。
もうひとつ、見ておきたい数字があります。
大阪府のひとり暮らし高齢者の割合は、39.3%(2020年)。
全国平均の33.1%を、6ポイント上回っています。
大阪府高齢者計画2024によれば、2040年にはこれが45.4%にまで上昇する見込みです。
独居でご病気や介護を抱えながら、それでもこの家で暮らし続けたい──そんな願いを持つ方が、大阪では特に多いということでもあります。
幸い、大阪府の訪問看護の体制は手厚い側にあります。
大阪府の訪問看護ステーション数は、1,769箇所(2023年4月時点、全国訪問看護事業協会)。
全国第1位です。
ふくろくも、その一員として、この地域の在宅医療を支える役割を担っていきます。
厚生労働省が令和4年度に行った「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」では、こんな結果が報告されています。
末期がんを想定した場合に「自宅で最期を迎えたい」と答えた一般国民は、約4割。
一方で、厚労省「令和5年(2023)人口動態統計」によれば、実際に自宅で亡くなった方は17.0%。
希望と現実のあいだには、いまも大きな開きがあります。
このギャップをまるごと埋めることは、難しいかもしれません。
けれども、住み慣れた家で過ごし続けたいという願いに、できる限り寄り添うこと。
訪問看護の役割は、まさにそこにあると、私たちは考えています。
七福神という存在から名前をお借りすることは、私たちにとって、ささやかな誇りであると同時に──。
日々の自戒と、ご利用者様への約束でもあります。
すでにお話しした通り、「寿(長寿)」を歩まれるのはご利用者様ご自身です。
だからこそ、私たちが大切にしたいのは、その傍らで「福」と「禄」を、毎日少しずつ運び続けることです。
「福」とは、訪問の時間に交わす何気ない会話。
お顔色を見て交わす笑顔。
「今日も来てくれてありがとう」と言っていただける、その日常のささやかな手応え。
「禄」とは、住み慣れたお家で、ご病気や障がいがあっても、その日らしい暮らしを続けられること。
お薬の管理。療養相談。必要なときの医療処置。
そういった日々のサポートが、暮らしの確かさを支えます。
厚労省の同じ調査(令和4年度)では、もうひとつ印象的なデータが報告されています。
「最期について考えるときに最も重視すること」として、「家族等の負担にならないこと」を挙げた方が71.6%にのぼった、という結果です。
ご本人だけでなく、ご家族もまた、この問いの真ん中に立っておられます。
眠れない夜。
不安な朝。
誰にも頼れない孤独。
そういった「ご家族の時間」にも、訪問看護はそっとお邪魔したい存在です。
ふくろくでは、ご家族との対話を、サービスの大切な一部だと考えています。
専門的なケアだけでなく、言葉にしにくい不安をひとつずつ言葉にしていく時間。
それもまた、私たちがお届けする「福」のかたちのひとつです。
A. 違います。「ふくろく」は七福神「福禄寿」に由来する名前で、福(しあわせ)・禄(暮らしの糧)・寿(長寿)の三徳をお名前にお借りしたものです。「ふくろう(梟)」を冠する訪問看護ステーションは全国にたくさんありますが、私たちはまた別の系譜の縁起から名前をいただきました。柔らかな響きのひらがな表記は、訪問看護らしい親しみやすさを残したいという想いからです。
A. 大東市、東大阪市、大阪市、八尾市などを訪問エリアとしています。これらの地域にお住まいで、訪問看護をご検討中の方は、まずはお気軽にお電話ください。所在地は大阪府大東市諸福6-1-7、電話番号は072-800-5493です。エリアの詳細やご訪問の可否については、お住まいの場所や状況に応じてご案内します。
A. はい、ご本人の希望に寄り添い、ご家族・主治医・ケアマネジャーと連携しながら、住み慣れた場所での療養を支えます。終末期のケアは、ご本人とご家族の意思を最大限に尊重することが大切とされており、訪問看護はそのチームの一員として関わります。具体的な体制やサービス内容については、お気軽にご相談ください。
A. 内科・精神科全般に幅広く対応しています。慢性疾患の管理、お薬の調整、療養生活のご相談、精神科訪問看護まで、ご利用者様の状態に応じて柔軟にサポートします。料金は加入されている保険や所得によって異なりますので、詳しくはご利用料金のページをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。
ふくろく訪問看護ステーションの名前について、ここまでお読みいただきありがとうございました。
最後に、要点を振り返ります。
訪問看護のご相談は、ふくろく訪問看護ステーションまでお気軽にどうぞ。
私たちの想いについて、もう少し詳しくはステーション理念ページもご覧いただけます。